退職祝いで色紙を書く理由とは?

疑問

これから退職される方が居ると、様々な方が贈り物をしたり催し事をしたりと退職祝いをします。

例えば、贈り物として尊ばれる物の一つに色紙がありますが、実はこの色紙の歴史は意外に古いものです。

日本人が色紙を書く背景には、長い歴史の中に培われた文化という理由があります。

日本における紙の歴史は古く、現在のように詩や歌等の特別な言葉を記す為に色紙という言葉が使われ始めたのは、平安時代の事になります。

その名の通り、美しい色の紙であり装飾もされているという手の込んだ作りであり、現存する物は現代人から見ても瀟洒で洗練された文化を感じさせる物です。

平安時代の長編小説として知られる源氏物語の中でも、源氏が大切にしているコレクションの1つとして登場するように、貴族達の高度な文化を源流としています。

江戸時代の記録にも、旅に出る仲間の為に和歌を書いた紙を贈ったという逸話が残されています。

平安時代に貴族が生み出した物が江戸時代にまで生き残り続け、武士や町民の交流の中で発展してきたと言えるでしょう。

そして現代に至るまで形を変えながら、退職祝いの贈り物にまで繋がってるという歴史の流れがあります。

グリーティングカード

このように個人的なメッセージを特別な紙に書くという文化は洋の東西を問わず見られ、例えばアメリカやイギリスといった国ではIT技術の進歩した現在でもグリーティングカードという形で根強く残っています。

日本と少し違うのは、バレンタインデーの際に匿名で好意を伝えたり、郵送を利用して送ったりするという所です。

このように現代文化としては、個人的にグリーティングカードを贈る欧米に対して、日本の場合は退職祝いのメッセージを直接渡すという形が主流であるという違いがあります。

1人ずつグリーティングカードでメッセージを書いて相手に贈るのも素敵な習わしですが、皆が1つの紙にメッセージを寄せて書いて送る習わしも素晴らしい物と言えるでしょう。

しかし、元々は欧米と同様に個人的にメッセージを書いたカードを作る文化があった日本が、皆でメッセージを書いて色紙を作るようになった事には重要なきっかけがあります。

連判状

日本における、中世の時代に登場した連判状です。連判状は歴史の教科書でもおなじみの、皆の名前を傘の骨のように並べて書く形式です。

元々は武士達が書類に署名を並べる際に、お互いが対等の関係である事を示す為に始まった書き方でした。

上下や左右に並べて署名をすると、署名の位置関係から上下関係が生じたように見えてしまいます。

傘の骨の様に署名を並べる事で、署名した全員が上にも下にもならない対等な関係を示す事ができました。

このように、退職祝いに色紙を書くのは日本の長い歴史の中で培われた豊かな文化が、現代にも受け継がれているからです。

退職する方へのメッセージを傘の骨のように並べて書くのも、かつて武士達が生み出した精神的な遺産が息づいています。

貴族の文化から始まり、中世の武士達や江戸の町民達によって発展してきた日本独特の文化が、今もなお人々の心を繋ぐ形で残っているという事です。